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大企業病の作り方、治し方 : タイム・コンサルタントの日誌から

それら症状の一番根底にある問題は、組織の構成員が、『なぜ』を問わなくなることだ。なぜ、その書類が必要なのか、なぜ、その手続きをするのか、自分はなぜ、この仕事をしているのか。理由が、「ルールで決まっているから」「やらないと自分がクビになるから」という、目前の壁だか枠組みだかで、思考停止するのが、特徴だ。つまり思考停止こそ、大企業病の根本的な病巣なのである。

なぜ、この仕事が会社にとって意味があるのか。いつ、どのような形で価値を生みだすのか。そうした根源的な『なぜ』、射程距離の長い『なぜ』を問うことこそ、自分個人を病巣からひきはなす最良の手段だろう。わたしは少し前に、「なぜなぜ分析」の誤った使い方を批判した。だがわたし達は、本当は品質不良問題などではなく、本来の仕事、標準の仕事についてこそ、『なぜ』を繰り返し問わねばならない。それで会社全体の病状が治るとは、言わない。それは、自分たちを少しでも正気に保つために必要なのである。

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大企業病の作り方、治し方 : タイム・コンサルタントの日誌から

では、大企業病を治す方法はあるのか? パーキンソンの処方は、こうだ。「ホテルの所有者がながいこと留守にしたあと、帰ってきて、ホテルが荒れ放題だったと知った事態にくらべてみることができる。・・これを直す手段はいろいろあるが、いちばん早くて、いちばん効果的なのは、二百人のお客を招いて、カクテルパーティをひらき、三日後に宴会をやり、さらに二日後に舞踏会をやると宣言することである。(中略)他の組織も少なくとも一時的にはこれと同様の方法で甦らすことができる。三つの段階に分けた新計画を宣言するのが手だ。第一段階は社員の能力の範囲内でよい。第二段階は相当困難なこと、そして第三段階は明らかに不可能なことだ。こうした順序で、こうした内容の仕事に直面すれば、どんな組織でも元気をふるいおこすにちがいない。」p.274この処方箋が、ほんとうに巨大な組織にきくのだろうか? わたしには疑問も残る。だが、彼の主張はわかる。それは、企業は永遠に成長し続けることはできない。拡大には退廃が、不可避的に内在する、ということだ。

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原価の秘密 - なぜ、黒字案件だけを選別受注すると赤字に陥るのか : タイム・コンサルタントの日誌から

機械の減価償却費は、固定費である。それを、「稼働率」と「機械賃率」を用いて変動費化して原価計算に組み入れる、というのが、通常用いられる製造業の原価管理だ。この手法は、機械の能力が制約であり、作れば売れる大量生産時代は有効であった。しかし上の例で見たとおり、受注生産で仕事量が不足気味のときには、かえってミスリードになる。

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原価の秘密 - なぜ、黒字案件だけを選別受注すると赤字に陥るのか : タイム・コンサルタントの日誌から

あなたの工場では、年間の総操業時間は2,000時間である。そして導入した機械の減価償却費は毎年2,000万円だ。だから、機械が100%フル稼働できれば、機械賃率はちょうど1時間あたり1万円になる。部品を1時間加工したら、1万円の原価がかかる勘定だ。もし80%稼働率ならば、賃率は1万2500円になる。つまり、同じ製品を同じように加工したとしても、年間全体の稼働率を上げれば、機械賃率は下がり、したがって原価が安くなる。だから、工場は機械の稼働率を最大限上げるよう努力すべし、ということになる。ただし、機械の本当の実稼働時間は、その年度が終わって締めてみないと分からない。それでは意思決定に支障をきたすので、ふつうは期初に「今期の推定稼働率」を決めて、それで製品の標準原価を計算する。そして、期末になったら「今期の実稼働時間」を集計し、最初の想定と違いが出た場合に、「原価修正」をかける。これが、見込生産時代にできあがった工場運営、原価管理の考え方だった。

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なぜアメリカに海外工場を展開しないのか? : タイム・コンサルタントの日誌から

「A 人間の能力と資質」であるが、アメリカのエンジニアは概して真面目かつ理詰めなタイプが多い。彼らの特徴は、論理的説明+成果を見せることで、自分から動くようになることだ。この点、日本の技術者は優秀だが職人気質であり、残念ながらしばしば頑固でチャレンジや変化を嫌う。中国・東南アジアは、優秀なエンジニアとそうでない者の落差が激しいが、まだ全般的には日米のレベルには追いついていない。

労働者については、アメリカの労働者は機械さばきが上手である、という特徴がある。これは少し意外だろうが、田尻氏によると米国の労働者は農家出身者が多い。そして、あの国の農家は車でも農機具でも、自分で直しながら使うのが常識であり、DIYセンスのかたまりなのだそうだ。日本や他のアジアの国では、労働者は手先が器用だが、そのかわり機械にはやや弱い。マネジャーの資質・能力の差については、ここでは論評を控えておこう。もちろん、日本が世界で最優秀(笑)なはず、である。

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ちなみにアメリカ立地に向いている業種として、田尻氏が指摘していたのは、自動化・機械化の進んだ産業であり、具体的には以下のようなものだった:

半導体、ガラス、機械部品、鋳物、テキスタイル(紡績)、食品、医薬品、化学など

逆に、向かない業種だってある。たとえば、縫製、電気製品最終組立など、労働集約的な工場である(こうした産業は、すでに米国から外に出てしまっている)。

いうまでもないが、わたしは何もアメリカが全て良く、中国や東南アジアがだめだと主張してるのではない。工場の立地戦略は、きわめて総合性の高い、多面的な観点から検討すべきことである。それは流行や促しで決めることではなく、各社それぞれが熟考して決めることだ、と言いたいまでだ。何よりも、事前の十分な情報収集が大事である。必要ならば、それを助ける専門家や、支援する公的仕組みなども存在する。そして、イメージや偏見にとらわれずに、総合的・多面的に分析すること。それこそが経営の仕事ではないか。

あるいは、熟慮の結果、やはり日本にとどまるのが最善だという結論になるならば、それでももちろん良い。誰でも、自分で決めて自分で結果を引き受けるのである。それが自由経済というものだ。そんなことを、テキサス南部のだだっ広い平地を走りながら、わたしは考えていた。

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なぜアメリカに海外工場を展開しないのか? : タイム・コンサルタントの日誌から

「B 組織力とビジネス文化」であるが、米国企業文化の特筆すべき点は、新しいことを積極的に試そうとする意欲が高い点だ。つまりイノベーションのポテンシャルが高いのである。日本は、率直に言って、「ブランド信仰」「横並び志向」のようなものが強く、挑戦よりも失敗を避けることが優先されるきらいがある。

転職についていうと、意外に思われるかもしれないが、アメリカの製造業では日本で思われているほど簡単には転職しない。同じ企業で10年、20年働き続ける人が多く、それこそ親父や祖父の代から同じ職場で働いている、という人だっている。もちろん変転の激しい金融業界・IT業界などではホワイトカラー層に転職も多いが、少なくとも中国や一部の東南アジアのような、労働者の激しいジョブ・ホッピングに悩まされる国柄ではない。その分、社内訓練の蓄積効果も高い。もちろん、アメリカはルールとシステムで仕事を動かす国であって、日本のような手厚い社内教育は必要ない。(そのかわり、きちんとルールとシステムを設計しないと会社は回らない。日本人得意の、すり合わせと浪花節とあうんの呼吸では、組織は動かぬ)

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なぜアメリカに海外工場を展開しないのか? : タイム・コンサルタントの日誌から

もちろん、作業員(一般工)の基本給ではまだまだ差は大きい。横浜が月額3,300ドルに対して香港・ソウルでも1,600〜1,700ドル程度だから半分だ。だが、工場という仕組みは、一般工だけで回るものではない。工場がきちんとシステムで動くためには、ちゃんとしたマネジャー層が絶対に必要である。その人件費が日本に迫っているということは、日本企業の給与体系ではもう、この先、良いマネジャーを雇えなくなることを意味する(日本の本社の管理職よりも高い給料を、現地の同じ等級の社員に喜んで払える企業は少ないだろう)。自立した生産拠点として機能していくためには、自社の管理職の給与体系も再考する必要がある。

管理職は日本から派遣するからいい? そうはいかない。駐在員用住宅借上料は、中国の各都市を含め軒並み月額2,000〜4,000ドルである。日本人の給料がちょうど倍になる勘定だ。事務所賃料も、香港は別格に高く、また北京・上海・大連・ソウル・シンガポール・ハノイ・ヤンゴン・ムンバイ、いずれも横浜を抜いている。一般用電気料金も、「日本は世界一高い」と言われているが、データを見ると、高い都市は日本並みに高い。電気の供給品質の差を考えたら、日本の方が安いくらいだ。(もっとも製造原価に占める電気代の割合は、4つの特別な業種を除くと、そもそも小さなものだ。だから、原発を止めると電気代が高騰して、日本の製造業が空洞化するというのは、データから見る限り誇張だろう)

少し話を戻すが、工場立地を考える際の評価軸は、決して労働者人件費だけでないことは分かっていただけただろう。

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